大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和56年(ラ)956号 決定

抗告人 大森農業協同組合

右代表者理事 高橋正夫

右代理人弁護士 海地清幸

主文

横浜地方裁判所が同庁昭和五六年(ケ)第一九八号事件につき昭和五六年一〇月一六日になした不動産の売却許可決定を取消す。

理由

本件抗告の趣旨及び理由は別紙のとおりである。

そこで検討すると、本件抗告の理由とするところは要約すれば、本件不動産競売事件について、昭和五六年一〇月九日入札期日が開かれたが、同期日において執行官が不当に入札の締め切りをなし、そのため抗告人の入札参加の機会が奪われたものであって、この執行官の入札手続は違法であり、したがって同入札期日の入札の結果に基づいてなされた同年一〇月一六日の売却許可決定は民事執行法七一条一号又は七号の事由があるので取消されるべきものであるというにあるが、記録によれば、右入札期日は昭和五六年一〇月九日午前一〇時に開かれたが、入札の催告をしたのが同日午前一〇時三〇分であり、入札を締切ったのが同じく同日午前一〇時三〇分であることが執行官宮本護三郎作成の期日入札調書の記載により認められる。そうすると、同期日において執行官は入札の催告をした直後に入札を締め切ったものというほかなく、その手続は民事執行規則四一条一項の規定に違反し、買受希望者の買受申出の機会を奪い、入札の適正を損う違法なものであり、したがって本件競売は民事執行法七一条七号にいう売却の手続に重大な誤りがある場合に該当することは明らかである。それゆえ原裁判所が右入札期日の結果に基づいて同年一〇月一六日言渡した売却許可決定は相当でないといわなければならない。

よって本件抗告は理由があるので主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 鰍澤健三 裁判官 枇杷田泰助 佐藤邦夫)

〈以下省略〉

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例